2025年度入学式を行いました

2025年4月6日、神山まるごと高専3回目の入学式を行いました。
入学式の理事長と校長の式辞を紹介します。
理事長の寺田です。新入生のみんな、改めてWelcome to 神山まるごと高専。
入学、本当におめでとうございます。そして、保護者の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。
ご来賓の皆さま、スカラーシップパートナーの皆さま、本日はお忙しい中お越しいただき、本当にありがとうございます。この入学式も気づけば3回目となりました。毎回、新入生の皆さんの期待と不安が入り混じったような顔を前にすると、僕自身、身の引き締まる思いがします。
少しお時間をいただいて、ファウンダーでもある理事長として、皆さんにメッセージを送りたいと思います。
まず、皆さんにとって一番大事なこと。それは、自分自身の選択でこの場に来ているということです。そうですよね?
皆さんは、自分自身の判断・意思決定で、この神山まるごと高専を選び、入学してきた。
もしかしたら、人生における初めての、誰のものでもない、自分自身の選択・意思決定だったかもしれません。当然、いわゆる普通の高校に進学するという選択肢もある中で、できたばかりの神山まるごと高専を選び、受験して、突破して、入ってきた。
この一連のプロセスの中に、皆さん自身の判断があり、もしかしたら、企業家精神の芽生えがあったのではないかと考えています。
私はそこにあるものを何と呼ぶか——
私はそれを“野心”と呼びたいと思っています。野心。つまり「野の心」です。
少し荒々しさを感じる人もいるかもしれません。
でも、よく使われる“志”や“夢”という言葉よりも、はるかに本質を捉えているのではないかと思います。「何かしてやりたい」「自分なら何かできるんじゃないか」。そういった期待と、一方で自信のなさや不安。それらが入り混じったもの——それこそが“野心”であり、起業家の原動力。自分の中にある熱量(マグマ)なんじゃないかと思います。
先日、本校の理事会を行いました。そこで、高校時代の私を知る幹事の串田さんが「寺田さんは当時、学校という枠に収まらない外れ値のような存在だった」と話していました。
思い返せば、そうだったなと。常に、何かしてやりたいけど、モヤモヤしていた。そんな時代だったなと思います。
学校の勉強や学校の枠を越えて、何かしたい。仕掛けたいと思う子たち、そんな、昔の私のような彼ら彼女らのための環境を作りたい——
私はまさにそんな思いで、神山まるごと高専を作りました。つまり、学校の中での学びが、ものをつくる力で“ことを起こす”、その原点となる“野心”と社会とをつなぐ道しるべになってほしい。そんな思いでこの学校をつくりました。
だからこそ、皆さんの“野心”を、健全にこの学校の学びの中にぶつけてほしいと思います。
きっと、好きじゃない科目や「これ何のためにやるんだろう」と感じることもあるでしょう。でも、それもすべて“ものをつくる力でことを起こす”未来につながっている。
その覚悟を持って、我々も学び設計していきたいと思っています。もし授業に、学校の営みに疑問が生まれたときは、ぜひ周りにいるスタッフにぶつけてください。思いを持って集ったスタッフたちです。きっと、皆さんの疑問に向き合い、応えてくれると思います。
加えて、その疑問やモヤモヤを、逃げ出す理由にしてほしくないなとも思います。
冒頭に言った通り、皆さんは自分でこの場所を選んだ。その覚悟の延長線上で、「なんでだろう」と思うことにも向き合ってほしいと思います。*****
もう一つ、皆さんに覚えていてほしいキーワードがあります。
それが、この学校のビジョン「βメンタリティ」です。
ベータ、というのは“未完成”という意味です。受験プロセスの中で、この考え方に触れた人もいるかもしれません。
僕自身、長らく企業家としてやってきて思うのは、起業家的な考え方とは「すべてはベータ(未完成)」という前提に立つことです。すべては途中にある。すべてはより良くするためにある。
そう考えると、“失敗”という概念そのものがなくなってしまいます。皆さんの年齢では、クラスでの出来事一つ一つに天国と地獄があるように感じるかもしれない。でも、すべては学びの過程です。
うまくいかないことから何を学び、次にどう活かすか。それでしかありません。
この“ベータメンタリティ”を、私たちは学校のビジョンとして掲げています。皆さんの“野心”が、この学校の学びの中、あるいは外へぶつけられる中で、たくさんの“失敗”に思えることが出てくるでしょう。
でも、それらもすべてベータの中にあるんだと捉えてください。
我々大人側、スタッフ側も、授業の内容や構成を皆さんの“野心”の道しるべにするつもりで設計していきます。
同時にこのベータメンタリティを持って、私たち自身も学校を、どんどん変えていきたいと思っています。ぜひ“野心”を持って、そして、ベータメンタリティを持って、この学校での5年間を過ごしてもらえたらと思います。
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この数年間で、世の中の様子は大きく変わってきました。
世界情勢、日本の立ち位置、そしてAIの台頭。AIは、あらゆるものを変えるかもしれない。
教育の在り方も、企業の在り方も、変えるかもしれない。
答えはわかりません。それほど不確実性の高い時代です。でも、今目の前にある現実に、真剣に向き合うことの価値は変わらないと思います。
皆さんの“野心”こそが、道しるべになる。
その“野心”を武器に、失敗を恐れずチャレンジしていく。僕が影響を受けた言葉のひとつに「たった一人の情熱が世界を変える」があります。
入学式では毎年この言葉を少しずつアレンジして話していますが、僕が伝えたいのはこれです。「あなたの野心が、世界を変える。」
野心を持って、ものをつくる力で、コトを起こし、人間の未来を変えていきましょう。
改めて、入学おめでとう。
神山まるごと高専 理事長
寺田親弘
みなさん、こんにちは。五十棲です。
まずは、新入生のみなさん、ようこそ神山まるごと高専へ。昨晩、よく眠れたでしょうか。
9月から着任した私にとって皆さんは初めて入試から関わり、入学式を一緒に迎える学年になります。そういう意味で3期生の皆さんは特別な存在でもあり、本当にこの日を楽しみにしていました。そして、保護者のみなさま、 改めてこの学校を信じ、お子様を送り出してくださったこと、感謝申し上げます。
神山町のみなさま、企業・団体のみなさま、日頃より学校のチャレンジをあたたかく支えていただき、本当にありがとうございます。この学校は皆様のサポートなしには成り立たない、3年目を迎えて一層強く実感しています。さて、まず最初に。
これから、3期生の同級生たちは一緒に切磋琢磨しあう仲間になります。
そのキックオフの日、隣に座った人と改めて挨拶できればと思います。
隣の人、あるいは前後の人と、お互いの眼を見て、「よろしく」と握手をしてみてください。たまたまかもしれませんが、こうして隣になった同級生と、10年後、20年後に、「あの時隣に座ったから今がある」というようなことが起きて欲しいなと思っていますし、きっと起きるだろう、そう思っています。保護者のみなさま、本日こうしてご臨席いただけましたこと、感謝申し上げます。
私たちは、一人の人間として、学生たち一人一人と本気で向き合うことを大切にしています。
昨日の入寮式でも申し上げましたが、そのことは、この学校が手厚いサービスを約束する学校であるということではありません。また、「〇〇大学に入れる」とか、「就職率がすごい」とか、そういったことを約束する学校でもありません。むしろ、失敗する経験、もめごとに巻き込まれる経験は確実に約束されている、そんな学校です。ですが、その経験がきっと学生たちの成長につながっていく、そう約束します。
不安に思うこともあるのではないかと思います。ですが、きっと帰省のたびに、ちょっとずつ、でも確かに育っていっている姿を見せてくれるはずです。その成長を、どうかじっくりと見守ってもらえるとありがたく思っております。さて、改めて新入生のみなさん。
皆さんには二つのことをお伝えしたいと思います。
一つ目は、欠落・欠陥を楽しむ、ということです。この学校は、まだまだ未完成な学校です。
先輩はいますが、卒業生はいません。つまり、誰も“ゴール”を知りません。毎日が試行錯誤の連続です。足りないことも、不便なこともたくさんあります。入学して生活を始めてみると「あれ、思っていたことと違うぞ」と思うこともきっとあると思います。
台湾のオードリー・タンさんが、ある詩を引用してこんなことを言っていました。
「全てのものにはヒビがある。そして、だからこそ光が入る」
ひび割れや欠陥は、あなたがコミュニティに貢献するための招待状です、そんなお話です。
この未完成な学校にはヒビ割れも多くあります。それはつまり、みなさんが貢献できる場所がたくさんあるということでもあります。「与えられる」のを待つのではなく、「つくっていく」側になってほしい。
そのほうがずっと面白い学校生活を送れると思っています。そしてもうひとつ。是非、先輩や学校のスタッフを存分に突き上げてください。
この学校には頼りになる先輩がいます。すでにいろんな挑戦をしてきた先輩たちです。特に1期生は、学校の建物がなかったころにこの学校に飛び込むことを決断して飛び込んできた、たくましいメンバーです。
でも、遠慮はいりません。どんどん意見をぶつけて、技術で挑戦して、先輩たちを“いい感じにザワつかせて”ください。そして、1期生、2期生の皆さんはどうかそんな挑戦を懐深く受け止めてほしいです。そうやって、上の代と下の代が混ざり合って、コミュニティは活性化していきます。
それが、神山まるごと高専という場のエネルギーとなります。この学校には、挑戦をおもしろがり、尊重し合う仲間たちがいて、
対話を大切にする大人たちがいて、新しい可能性に心をひらいてくれる町があり、サポートしてくれる企業の方々が居ます。その環境を活かして、どんどん挑戦し、たくさん泣いて、笑ってください。
そして、5年間を終えた時に「あぁ、充実した5年間だったな、楽しかったな」と思える、そんな5年間を過ごしましょう。
ようこそ、神山まるごと高専へ。
5年間、存分に楽しみましょう。ありがとうございました。神山まるごと高専 校長
五十棲浩二